いい旅・夢Kiwi スカイキウィ
2008年
4月5日号
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ぽっかぽか通信
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27. マオリの歓迎儀式

「いい旅・夢日記」で何度かご紹介してきた、ポフィリ(PohiriまたはPowhiri):マオリの歓迎儀式について、ご紹介いたします。

私がロトルアに住むきっかけとなったヘリコプター会社「Kiwikopters」は、マオリ族の家族経営でした。
マオリとの関わりが、それからのNZ生活の原点のようなものですが、まだHPで詳しくはご紹介していませんでした。

ニュージーランドの先住民マオリ族は元々文字を持たない人達で、すべて歴史は語り継がれてきたものになります。
そのため、マオリの慣習・歴史、その他について説明する時、「いろいろな意味」で難しい問題が発生します。

しかし、学術的な話題を論じる事が主旨ではありませんので、観光という立場にたって、ごく気軽に書き進めていきたいと思います。
そのため、マオリ族自身の語る内容とは多少違うところもあるかもしれませんが、ご了承ください。
まずは、手始めとして、「ハエレマイ(Haeremai):歓迎」についての話題です

伝説によれば、マオリはハワイキと呼ばれる島から、カヌーの船団(タイヌイ、テアラワなど)に乗って渡ってきたといわれています。
ロトルアを中心とする最大勢力のマオリはテアラワ(Te Arawa)族になります。

マオリは排他的な民族で、部族同士抗争を繰り返してきました。戦闘民族たる所以です。

そのため、パ(Pa)と呼ばれる要塞を形成し、そこに食料を貯蔵したり、住居の拠点とするなどして生活していました。
必ずしも「パ」の中だけで生活するという訳ではありませんが、カインガ(Kainga)と呼ばれる村(集落)は大抵「パ」に隣接して作られています。


儀礼的な事を重んじるマオリが、儀式の場として利用する場所が、こちら「マラエ(Marae)」です。
英語にすると「Meeting House」、つまり「集会所」ですが、もっと神聖な意味合いを持った、マオリにとって最も大切な場所となります。

マラエの中心となる建物が、ご先祖の体といわれる「ファレヌイ(Wharenui)」です。

ファレヌイの正面上にある「顔」は、テコテコ(Tekoteko)と呼ばれ、ご先祖の顔を意味しています。
屋根はMaihiと呼ばれ腕を、(以降マオリ名は省略しますが)正面横の大きな柱は首の骨、屋根の先端は指の骨、扉と窓は目を、そして階段は足を意味しており、建物自体がご先祖の体そのものを表しています。
マオリの集落を訪問する場合、必ず儀式を受ける必要があります。
その儀式が、ポフィリです。
では、ポフィリを受けずに集落に入ったら?それは、「乱入」という事になり、戦争になってしまいます!

ポフィリは必ずしもマラエで受ける必要は無いのですが、マラエで行われるのが一般的です。

訪問者:マヌヒリ(Manuhiri)は、マラエに入る門の前で待機します。
(門を正面から見るとこのような感じです。)


ファレヌイ前に揃った受け入れ部族:タンガタ・フェヌア(Tangata Whenua)の中から、若い戦士が槍を振り回し、威嚇しながら近づいてきます。
ウェロ(Wero)と呼ばれる儀式に入りました。

訪問者:マヌヒリが、戦闘目的でなく友好のために訪れた事を確認するため、相手を挑発して出方を調べています。

マヌヒリの代表者(チーフ)は、威嚇に対して一切反応を見せてはいけません。

右の写真は、観光目的のウェロの様子ですから、お客さん代表のチーフの横に、案内係のマオリ女性も並んでいます。
本来の場では、チーフは男性一人と決められています。

友好のために来たと確認されると、戦士はタキ(Taki)と呼ばれる投げ矢をチーフの前に置きます。
タキは小枝でも良く、また他の武器でも構いません。

今日の観光では、タキはほとんどの場合、シダの葉(ウラジロ)が用いられます。


チーフは、タキを拾う事により、「友好のために来た」と相手に伝えます。
もし、武器を拾う場合、武器の柄を握ってはいけません。
「武器として利用できない状態」で拾う必要があります。

(右の写真と、斜め右上のチーフの写真とは、人が異なっていますが、良い写真が無かったので、違う日の写真を利用しました。)

ウェロにおける若い戦士は、一人で訪問者の前に近づく訳ですから、強さと敏捷さを兼ね備えた優秀な戦士である必要があります。

タキをチーフが拾った事を見届けると、戦士はファレヌイ前に戻り、カランガ(Karanga)という儀式に移行します。

ファレヌイ前で並ぶ、部族の女性、カイ・カランガ(Kai Karanga)が、歓迎の意を表して節に乗せて言葉を伝えます。
通常、位の高い女性がカイ・カランガを勤めます。

いろいろな内容が歌われますが、中心となる言葉が、
ハエレマイ(Haeremai)=いらっしゃい
になります!

カランガの最中、マヌヒリはマラエ真ん中を通り、ファレヌイ前へ進みます。


観光の場合、この後、チーフと部族数名とが、鼻と鼻をお互いに付け合う「ホンギ(Hongi)」という挨拶を交わし、マヌヒリ全員でファレヌイの中に入ります。

しかし、本来はタンガタ・フェヌア(受け入れ部族)とマヌヒリの間で、ミヒ(Mihi)・ワイアタ(Waiata)と呼ばれる、挨拶の交換が延々と続けられます。
挨拶:スピーチという事ですが、これも節に乗せて内容を伝えます。

ニュージーランドを紹介する日本のテレビ番組で、レポーター役のタレントさんがマラエを訪問する様子が紹介される事があります。
この時に、レポーター役の人が、日本の童謡などを歌う場面が何度か放送されました。
あの内容が、この儀式を表しています。
本来は、意味のある歌、スピーチになりますが、海外からの客を迎える所作として、その国を代表する歌を受け取るという意味になります。

ポフィリという儀式を通して、マヌヒリ(訪問者)からタプ(Tapu):聖なる物・精霊を引き出し、自分達タンガタ・フェヌアと霊的に融合するという、マオリが最も重んじるマナ(Mana)を体現する意味にもなります。

ホンギを交わしている写真がありませんので、ご紹介できないのが残念です。

ポフィリついて詳細に説明すると、さらに長い内容になりますが、観光目的では上記の内容で十二分だと思われます。

今後何かの参考になれば・・・ 〆


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